仏果を得ず

今日は朝からずっとこの本を読んでました。
三浦しをんが数年前に書いた小説です。
文楽の太夫修行の内側を描いた芸談ものといえるのかな。
落語界については何作かありますけど、文楽のは初めて読んだね。
すごく面白かった。

知らない世界だけに、最初少し戸惑いましたけど、芸の世界はみな同じです。
師匠がいて、弟子がいて…。
突然の抜擢があり、それにともなう嫉妬があり…。
その間にいくつもの浄瑠璃が出てきて…。

文楽をすごく見たくなりました。
かつて2度ほど、国立劇場に行ったことがあります。
でも、それだけかな。

元々、関西の芸能ですからね。
東京ではやっぱり歌舞伎でしょ。
演目はどちらにも共通しているものがたくさんあります。
ちなみに仏果というのは、成仏するという意味です。
忠臣蔵に出てくる勘平がおれは成仏なんかしないぞ、生きて生きて生き抜くのだと叫ぶ最後の台詞の中に出てくる表現です。

やあ、仏果とは穢らわし。死なぬ死なぬ。魂魄この土にとどまって、敵討ちの御供する…

忠臣になれなかった早野勘平の魂の表現です。
それと同じ気持ちをこの小説の主人公、健こと、笹本健太夫が表白するということになります。
芸は仕事じゃない。
だから終わりもない。
一生のめりこんで、数百年にわたる人々の思いを表現していくんだ。

彼の生きざまは、全ての芸人に共通してるものだと感じました。
もちろん、落語の世界も同じです。
ストーリーは波乱に満ちています。
三浦しをんは勘どころをおさえるのがうまいね。

つい読み通してしまいました。
「女殺油地獄」「日高川入相花王」「ひらかな盛衰記」「本朝二十四孝」「心中天の網島」「妹背山女庭訓」「仮名手本忠臣蔵」の話が随所に散りばめられています。
詞章もふんだんに載っています。
やっぱり芸談ものは面白いよ。

ぼくはこういうのが好きなんだなあとしみじみ思いました。
それにしても蒸し蒸しする1日でしたね。

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