老木の花

 今日も暑かった。
 毎日こればかりです。
 しかしどうにもならん。
 体温とそんなにかわらないのです。
 こんなことは今までなかった。
 タイとか、マレーシアで感じたような気温です。
 空気のぬめっとしたところも、まさに亜熱帯の印象かな。

 エアコンの中に入ってました。
 今までこんなに使わなかったけど、これはさすがにもう限界だ。
 奥様はお友達とデートだそうで、あっという間にどこかへ。
 そうなると、やっぱり本を読むしかありません。
 今日は白洲正子の本を読みました。
 町田に武相荘という、彼女の家があります。

 自然をいかしたいい家だ。
 旦那と仲良く暮らしていたんでしょう。
 なんとなく雰囲気がつたわってきます。
 さて今日は能の本でした。
 今月も観世の能を見にいく予定にしています。

 この人のエッセイはいいですね。
 実に味わい深い。
 恰好をつけていない。無手勝流です。
 能千番という言葉がある通り、理屈をつけるのでなく、まず数を見るということが大切です。
 彼女は子供の頃からずっと見続けてきたとの由。
 自身でも仕舞をなさった。
 だからよくわかってます。

 理屈じゃない。
 まず技術。足、手、腰。
 専門用語で型を書き入れた「型ツケ」と呼ばれる能の演じ方を、まず押さえる。
 そして師匠にこまかくなおしてもらう。
 どんなに止まっているように見えても、動いている。
 気を抜けば、そこで終わる。

 自分が主人公らしくふるまっていい気持ちになっていては、能にはならないと言います。
 そのものになるには、自分がいなくなること。
 無になる以外に道はないのです。
 能面の中に自分はすべて吸い込まれる。
 自分の役になりきる必要もない。
 この芸の厳しさが、見事にまとめられた本当にいい本です。
 
 車谷長吉が『赤目四十八瀧心中未遂』を書いた時、一番最初に激賞の手紙をくれたのが白洲さんだったそうです。
 それ以来、お付き合いが続いたとか。
 彼女はこの小説の中に何を見たのかな。

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