喜多八と日出子

 今日は昨日借りてきた本をまず2冊読みました。
 とにかく、でんと置かれている山を一つづつ片付けていかなければならん。
 朝のうちはまず『柳家喜多八膝栗毛』という本を…。
 これは面白かったです。
 というか、彼を好きな人じゃないと、まず読む気にはならんでしょ。
 全てこれ、喜多八師匠へのオマージュで構成されております。
 つまり興味のない人には、なんじゃらほいかも…。

 とにかく落語に対して、どれくらい真剣かということが、厭というほど伝わってくる本です。
 いくら酒を飲んでも、落語の話しかしない。
 一つの噺をああでもないこうでもないと、いつも頭の中で構成しなおしている。
 だから毎回、違う。
 噺が動いているのです。

 つまり何度聞いても面白い。
 ご贔屓もあちこちにいて、落語会を開いてくれる。
 気むずかしくて、シャイで、ひねくれている。
 しかし突然大声を発して、そのエネルギーを見せ始めると、もう止まらない。
 ちなみにお客が一番好む噺は「たけのこ」だそうです。
 本人が一番好きなのは「盃の殿様」だそうな。
 
 250以上の噺を稽古したとか。
 ところが捨てたものも多い。
 不動坊、大工調べ、富久、厩火事。
 みんな諦めた。
 このあたりの苦労話は、本当に面白かったです。

 さて2冊目は吉田日出子の『私の記憶が消えないうちに』。
 彼女は自身が高次脳機能障害であることをこの本で発表しました。
 どうも大型の猟犬を散歩させていた時のことが原因のようです。
 犬が突然向きをかえた時、引っ張られて塀にぶつかってしまったのです。
 その衝撃で脳に損傷を負ったとか。
 その後、記憶障害や注意障害などの症状が出てきました。

 何度目かの『上海バンスキング』公演でも、台詞が出なくなったり、歌がわからなくなったりしたそうです。
 その間にたくさんの仲間が亡くなり、寂しい思いもします。
 この本には本当に飾らない彼女の日常が、書き込まれています。
 父親や母親のことも。

 そして恋人のことも。
 捨てたことも捨てられたことも。
 日々、記憶が薄れていくなんて、あまりにも悲しすぎます。
 『アルジャーノンに花束を』の中に出てきた主人公チャーリーそのものです。
 最後まで夢中になって読んでしまいました。

 明日は残り3冊だ。
 どうなるのかなあ。
 風が吹いて寒かったよ、今日は…。

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