栃折久美子さんの本を読了。
なるほど、そうだったのかというのが正直な感想です。
全く知りませんでした。
彼女の作品は『モロッコ革の本』を読んで以来です。
森有正といえば、ぼくらの世代にはある種の重みがあります。
半ば教養主義として、彼の本を読んだ記憶があります。
言葉を正確に選ぶ人です。
それにとても美しい表現を使う。
『遙かなノートルダム』とか『バビロンの流れのほとりにて』『木々は光を浴びて』など、懐かしいタイトルがぼくの本棚にも並んでいます。
もうずっと手にとることもありませんでした。
これをきっかけにもう一度読み直してみるかな。
栃折さんの描く森有正はまるで駄々っ子だ。
それだけ心情が通い合ったということなんでしょう。
あのまんまいけば、あるいは結婚ということになったのか。
あるいはただの親しい友人で終わったのか。
遺産をわける話まででてきます。
東京にいる間、秘書をしてほしい。
そこをあなたの仕事場にしてもいい。
そのためのマンションを買いたい。
次々と会話が続きます。
物忘れがひどく、日常の用事がなかなか一人ではできない。
荷物をまとめて、空港へ赴くのも一大イベントです。
それを栃折さんはみごとにさばいていく。
彼女が装丁の仕事をはなれ、ルリユールにいそしまなければ、あるいはという瞬間があったことでしょう。
この続編は本のページへ書き込むかな。
とっても楽しかった。
いい本に巡り会えました。