羊と鋼の森

Diary

昨日学校で借りてきた本を朝から読みました。
宮下奈都さんの『羊と鋼の森』です。
主人公は新米の草食系ピアノ調律師、外村くん…。
全体を通じて、あまり感情移入ができませんでした。
なぜか。
よくわかりません。

今年の本屋大賞をとった作品だというので、結構期待していたんですけど。
ストーリーは淡々と進みます。
双子の姉妹が出てきて、片方がやがてストレスからピアノを弾けなくなります。
人間の持つ精神的な暗闇にスポットをあてるのが小説の一つの役割ではあると思うのですが…。
どうも消化不良のまま、ストーリーが進んでいきます。

先輩にあたる調律師がそれぞれの人生を垣間見せつつ、話は進みます。
しかし最後まで作品の世界に没入することはできませんでした。
キーワードは短編『夏の花』で有名な原民喜の言葉です。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

しかしぼくには最後までピンと来ませんでした。
これならば、同じ時期にノミネートされた米澤穂信の『王とサーカス』の方がずっと面白かったです。
小説は難しいところへさしかかっています。
昨今は事実の重みがありすぎる。
まさに小説よりも奇なりが小説の現在そのものなのです。

森の香りがところどころからしてきて、それがピアノの音色と重なる予感はありました。
柔らかい文学と呼べば呼べるのかもしれません。
しかし最後まで登場する男性たちが、どことなくひ弱に見えたのはなぜでしょう。
女性の目から見た男の造形という印象が強かったからかもしれません。

明日はまた別の作品を読みましょうか。
それとも与太郎噺のお稽古かな。

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