犬婿入り

Diary

まさかこの本を今になって読むとは思ってもみませんでした。
ここのところ精力的に多和田葉子のものを漁っています。
今日は随分昔に芥川賞をとったこの作品と、長編『雲をつかむ話』を途中まで読みました。
へんなタイトルだなあ。
つい先日芥川賞をとった『異類婚姻譚』という本谷有希子のものまでは手が伸びていませんが、こういう類いの話は面白いね。

どこまでが現実でどこからが夢なのか。
その境がよく見えません。
だからめまいを感じながら、作者と一緒にある風景の中をさまよい歩いている気がします。
いまから20年以上も前の小説なので、もう手にとる人もいないでしょう。
だから読むのかな。
よくわかんない。

ストーリーもあるようなないような。
しかし読後感は悪くないです。
宇宙遊泳をした後みたい…。
『日本霊異記』を持ち出すまでもなく、こういう話は世界中にあります。
だから珍しくはないんだけど…。

おそらく彼女が住んでいた団地のイメージがどこかにあるんでしょう。
主人公を取り巻く異種類との関係が、実に淡く描き出されます。
似た感性をもっているのは、さて誰なんだろう。
名前が出てきません。
角田光代かな。
川上弘美でもないし。
やはり違いますね。

とにかく今日は一日中、この人の世界の中にいました。
長編の方は、明日もずっと読み続けることになりそうです。
ハンブルグの風景がなにかの記号に似て、像を結びません。
きっと都市の名前も必要ないのでしょう。
作中に安部公房の『箱男』が出てきました。
懐かしい。

ここのところ、あんまり小説を読んでいなかったので、海綿に水がしみこむようです。
ちょっとした快感だな。
本谷有希子のは芥川賞をとる前の作品の方がよさそうなので、それをリクエストしておきました。
明日から3年の国語表現が始まります。
どんなメンバーなんだろ。
楽しみだな。

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