土屋主税

Diary

 昨日NHKで放送した忠臣蔵外伝「土屋主税」を見ました。
 四代目中村鴈治郎襲名披露の興行でもあります。
 忠臣蔵というのはいったいなんなんでしょう。
 日本人にとってね。
 魂の故郷なんて呟いていいのかなあ。
 主君への絶対的服従というのでもない、一種の美意識なんでしょうかね。
 よくわからん。

 丸谷才一に『忠臣蔵とは何か』という本があります。
 名著ですよ。

 さて、この土屋主税という芝居はいかにも上方歌舞伎という演目です。
 それも今の藤十郎より、祖父鴈治郎の芸風をそのまんま表現したようなものです。
 まさか本所松坂町の吉良上野介の家の隣が舞台になっているとは知りませんでした。
 討ち入りの時に土屋主税邸へ吉田忠左衛門方より従者が来たそうな。
 「浅野内匠頭家来が、主人の敵である吉良上野介殿御宅へただいま押し込みました。あるいは騒動が当家に及ぶかもしれませんが失火などへのご懸念は無用のこと。注意は万端にいたします。武士の情けです。どうかそのままお見捨ておきください」
 と注進したそうです。
 かなり史実に近い話なのです。

 元々、義士たちを心から応援していた土屋は、旗本三千石の身でありながら、彼らをあたたかく見守ったとか。
 ここいらが芝居の方では大高源吾との邂逅などとうまく重ねてあります。
 宝井其角を模した俳人の登場などもあり、なかなか賑やかな舞台だったなあ。
 ストーリーだけを追うと、ちょっとあり得ないと思うけれど、そこはそれ。
 やはり歌舞伎なのだ。
 みごとに人の心をつかむ構成になってます。

 最後まで討ち入りのことを明かさず、皆にさげすまれ、悪態をつかれる大高源吾の横顔。
 西国の大名に雇ってもらうと嘘をついて…。
 其角が「年の瀬や水の流れも人の身も」という発句を源吾に向けます。
 すると、源吾は「明日待たるるその宝船」という付句を返して立ち去るのです。
 ここいらがまたにくい。
 俳句の中に、それとなく討ち入りのことを暗示しているのを読み取ったのが、まさに土屋主税その人でした。
 
 最後はめでたしめでたしで、「忠臣は二君に仕えず」というかつての武士道がこれでもかと描かれます。
 いまなら、一度入った会社はやめないということかな。
 その前にリストラされちゃうけどね。
 忠臣蔵、いいですよ。
 やっぱり当たり狂言だな。
 また他のも見よっと…。

タイトルとURLをコピーしました