懐かしい風景

Diary

天気がよかったので、以前住んでいたあたりを散策しました。といってもそんなに遠くじゃありません。ちょっと車を近くの公園にとめ、そこから歩いていけるのです。今から30年近く前に住んでいたところです。子供が生まれたりして、それはそれは忙しい頃でした。
でもそれだけに思い出がたくさんあります。この季節になると、原っぱでつくしをとりました。近所の子供達もまだ小さかった。それだけに濃密なつきあいをしていました。
坂をだらだらと下っていくと、診療所がありました。ここは随分と昔からやっているところらしく、近所でも評判のいい、お医者さんでした。なんでも診てくれました。当時まだそれほどに普及していなかった腸のファイバースコープまで備えていました。小児科の診断もみごとで、厄介な病気もすぐに判断してくれました。そのおかげで川崎病にかかった娘は後遺症もなく助かりました。すぐに小児病院を世話してくれたのです。命の恩人です。
しかし医者の不養生とはよくいったもので、あまりにも忙しすぎたため、早くに亡くなってしまわれました。その後は息子さんが診療所を継いだものの、しばらくは患者も減りました。しかし丁寧な応対は父親ゆずりで、また多くの人に慕われるようになったのです。いつも同じ看護婦さんが二人いました。一人はこわもてで、もう一人はやさしいいいコンビでした。
今日はそこを訪ねる楽しみもあったのです。
しかし診療所はもうありませんでした。新築の家が何軒もたっていました。聞くところによれば、近くのビルに引っ越したとか。30年の歳月は長いです。方丈記ではないけれど、昔ありし家はまれなりなのです。本当に歳月は矢のように過ぎていくものですね。
帰る頃、突然の黒雲に襲われ、あわやというところでした。春の空は浮気者だなあ。

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