『夜光の階段』を2日かけて読みました。
『黒革の手帖』『けものみち』の男バージョンかな。
松本清張の本は何冊読んだかわかりません。
ほぼ読み尽くしたと思って油断していると、まだあったという感じです。
実に多作だったということでしょ。
底辺から這い上がっていく人間を書かせたら、まず天下一品だ。
彼自身の怨念から出ているとしか思えない暗さが、見事という他はないのです。
少しでも上にのぼるためには、どんな手段も厭わない。
その一点につきるかな。
うまくいったり、結局は失敗したり。
展開の方法は多様です。
自伝『半生の記』を読むと、とにかくものすごい。
よくぞ、潰れなかったと思うしかないね。
ここまで書かなければ鎮魂にはならなかったんでしょう。
失敗作も数多い。これはダメだというのもかなりある。
でもいい作品は残ってます。
今でもテレビ局は彼のミステリーをドラマ化してる。
色褪せない理由は、まさに人間がそこに浮き出ているからね。
怖いよ、人間は。
欲望のためにはなんでもする。
自分の過去も消す。
そして這い上がる。時には人を殺してね。
でももうそろそろ読むのをやめます。
ここいらで、彼の怨念とは縁を切ろう。
少しくたびれた。
そこまで恨まなくたって、別の地平はある。
そう信じたいです。
名作と呼ばれる作品の全てには、彼の黒い情念が宿ってます。
それがひりひりとたまらない快感を呼ぶのも事実だけどね。
ぼくはそろそろ、卒業しますよ。
卒業だ。卒業だよ。