小説味読

Diary

一日、家におりました。
風の強い日でしたね。
朝からせっせと本を読みました。
ぼくにとってはかなり新鮮な時間だったな。
多和田葉子さんがその昔、群像新人賞をとった『かかとを失くして』と『三人関係』です。
『かかとを失くして』は以前に読んだ記憶があります。
でもほとんど忘れてました。

久しぶりに彼女のエッセイを授業で扱うので再読したというわけです。
言葉に対するセンスがありますね。
今からほぼ30年前の作品ですけど、古びてはいません。
むしろ新しい気さえします。

群像はこの人の前に村上春樹を発掘してますからね。
しかし多和田さんの文体では、たくさんの読者を得られるとは思えません。
ほとんど読点だけで、文章が綴られるためか、センテンスが異常に長いのです。
粘っこさは古井由吉とは違いますけど、しかし通底するものはあるかな。
たけど、一つの言葉から次へ移る時の快感を感じます。

おそらくいろんなイメージが沸騰している中で、本人は格闘しているんだろうな。
『三人関係』ははじめて読みました。
奇妙な人間の関係を実にうまく描いています。
何かが起こりそうで、しかし何も起こらない。
夢と現実の交錯がみごとです。

こういうのを読むと、小説をまた書いてもいいなという気分になります。
しかし彼女の読者は多くないでしょう。
マスを相手にした本ではない。
増田みず子の存在に似ているかもしれません。
高橋たか子や笙野頼子とは傾向が違うけどね。

2時過ぎにお散歩へ。
風はあるものの、近くの公園まで。
若葉が実に見事でした。
桜の散った後に出てくる青葉はいいね。
古民家の縁側に座って、しばらくぼんやりしちゃいました。
日があたってあったかいこと。
菜の花もたくさん咲いてたよ。

写真を撮りたかったな。
カメラを持って行けばよかったです。
誠に無念であります。

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