つい先日、佐藤優と手嶋龍一の対談集『賢者の戦略』を読んだ話はここにも書きました。
その中に、いま一番訳しにくい言葉が「インテリジェンス」だという会話が何度も出てきたのです。
これはいわゆる知性などという翻訳語とは全然違います。
むしろ諜報活動に近いのかも。
いや、そう言ってしまっては身もふたもないね。
つまり外務の深層に関わる調査をしつつ、自国のために人的関係を築き、資料を収集し、予見する営為を言います。
まさにロシアで活躍した佐藤優の行動そのものといえばいいのかな。
それが外務官僚を刺激しすぎたんでしょう。
目障りだったということかな。
今日、読んだ本はまさにそうした種類のものでした。
これは小説の形をとってはいるものの、ノンフィクションとしての色合いも濃いのです。
登場人物が少し恰好良すぎて、なんで小説にする必要があったのかなとは思いましたけど…。
つまり感情移入がしにくいのだ。
小説だったら、やっぱり与太郎が出てこないとね。
内容は北朝鮮が国家事業として、精巧な100ドル札を偽造するという話です。
日本から腕のいい製版技術をもった若者を拉致し、さらに凹版の特殊な印刷機を購入します。
紙幣にする紙、特別なインクの購入。
すべてが国家プロジェクトなのです。
考えてみれば、偽物とはいえ、本物と区別のつかない紙幣を作り出すことに成功すれば、永遠に財政の逼迫をきたすことはないのです。
これほどに有益な有価証券はない。
だからこそ、偽造紙幣を分析発見する装置を製造している技術者に接近し、その核心にあたる特許の内容を知ろうとします。
どこに、何カ所、偽造を見破るポイントがあるのか。
ホログラムを超えた超微細なICチップの開発者をどう籠絡するか。
どれもが、今現在の世界で起こりうる内容です。
エドワード・スノーデンの著した本について、以前まとめたことがあります。
世界では何もかもが起こりうる。
あの時、マイクロソフトやグーグルのしていたことも、ペンタゴンの関わっていた内容もすべて明らかになりました。
ちなみに彼はノーベル平和賞候補の一人でもあったね。
ますますこれからの世界はインターネット中心の世の中になっていくんでしょう。
カーナビで便利なGPS機能も、元はといえば軍事技術そのものです。
もちろん、インターネットも軍事技術です。
最新の衛星回線を利用し、偵察衛星を飛ばし、さらには諜報員を世界中にくまなく配置する。
プーチンになぜあれだけの権力が集中しているか。
それは彼がロシアの諜報機関KGBを牛耳っているからに他ならないからです。
ますますインテリジェンスの能力が必要な時代になっているのだ。
外交の要だね。
杉原千畝が今にいたるも大きな名声を残している背景には、彼の圧倒的なインテリジェンス能力があったからに他ならないのです。
厄介な時代になりましたよ、ほんと。