谷崎に酔う…

Diary

 今日も球技大会。生徒諸君は大変に元気です。
 色とりどりのTシャツを着て、競技に臨んでおります。
 ちょっとだけ体育館を覗きました。
 バスケットの試合を見ていると、あっちこっちから声がかかります。
 私たちのクラス、勝ったんだよ、とか、これから試合だから見ててね、とか。
 ありがたいことじゃないですか。

 さてお部屋に戻り、久しぶりに谷崎潤一郎の短編を読みました。
 先日来『細雪』を読んでおりましたが、ついに最終章に達してしまったのです。
 うまい。ただそれだけ。登場人物が、みんな目の前にいます。
 いつでも彼らと話ができます。

 さて今日再読した本は『蘆刈』と『吉野葛』。
 どちらもしみじみとした内容で、つい読まされちゃいます。
 いずれも古典を題材にしてます。
 一つは大和物語、一つは信太狐の伝説です。
 
 恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉

 吉野という土地に潜む神話を実にうまく使いながら、母を恋うてさすらう小説になっています。
 蘆刈の方は、彼独自の倒錯した愛の世界を描いています。
 どっちもうまい。派手じゃないけど、しみじみと読まされちゃいます。
 谷崎という人は本当の職人ですね。
 ここまで言葉を吟味されると、もう何も言えません。
 古典をそのまま読まされているような、幻影の中をさまよっていく小説です。
 この時期の作品は、一つの到達点かな。

 明日からは『少将滋幹の母』を読みます。
 再読に耐える作品は、現在それほど多くはありません。
 それだけに貴重な本です。
 楽しみがあるということは、それだけで幸せじゃないですか…。

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